マリトッツォに見る日本人の気質

ツイッターによると巷では

マリトッツォがすごいスピードで変化していってますね。

すでに原型をとどめていない状況になっています。

 

もともとのマリトッツォは

古代ローマ時代から存在するそうで、

ローマでは丸いパンを指してマリトッツォと言うそうです。

当時はそのパンに蜂蜜やドライフルーツを挟んでいたそうで、

時代が下ってホイップクリームがサンドされ

それが定着して現在のマリトッツォに

落ち着いているのだとか。

 

サンドするパンの材料も特に定義はなく、

挟む具に合うものなら何でもいいようです。

ローマでは丸い形ですし、

アドリア海沿いのマルケのは細長、

シチリアのものは三編み状と

形にも決まりはないそうです。

言ってみれば日本におけるコッペパンでしょうか。

 

日本で流行った要因は

まんまるの形の可愛らしさと

挟まれたクリームの量のインパクトが

消費者の目を引いたからでしょう。

 

ただここからが日本の面白いところで、

一つの題材に対して多くの創意工夫が加わっていきます。

 

形状を継承するものや、

味わいを残しつつ形を変えるもの。

形の概念、味の概念を受け継ぎさえすれば

マリトッツォという名称で販売をしてしまう。

お菓子ならまだしも

丸いすし飯に大量のマグロを挟んだものまで

マリトッツォにちなんで寿司トッツォという名前で

売られていました。

 

こういうの前にもあったな、

と思い出したのがカルパッチョです。

 

今ではカルパッチョといえば

スーパーのレジお刺身コーナーでも普通に見かけるような

メジャーな食べ物になりました。

しかしもともとのカルパッチョというのは

牛肉の薄切りにパルメザンチーズやオリーブオイルをかけた

イタリア風の牛刺のことをいいます。

カルパッチョという名称は

この料理を好んで食べた画家、ヴィットーレ・カルパッチョ

に由来しており

彼の絵の特徴的な赤色が牛肉の赤色と結びついて

カルパッチョと言う名前で広まりました。

 

それが日本へはイタ飯ブームとともに到来し、

ちょうど魚の刺し身を洋風に食べさせようと考えていた

日本の洋食料理人によってカルパッチョ「風」として

コース料理などの一品になり、

それが定着したために何故か刺し身の洋風な食べ方が

「風」がとれてカルパッチョと呼ばれるようになりました。

ひょっとすると今では

チーズとオリーブオイルで味付けした牛刺のことを

カルパッチョ「風」と呼んでも違和感を感じる日本人は

いないのではないでしょうか。

 

日本人のこういう気質は今に始まったことではないようです。

 

たとえば「なます」。

なますといえば思い浮かべるのは

おせち料理に入っている

大根と人参の紅白なますだと思いますが、

もともとは生肉や生魚を生のままで刻んで食べることを言い、

後に酢で洗って食べるものを指していました。

 

仏教の広がりとともに精進料理が普及すると

肉や魚を使わない野菜のなますが作られるようになり、

やがて野菜のなますがなますと認識されるようになる。

このあたりは中国では肉であった「餡」が

日本に来て豆で作られるようになった話に似ています。

羊羹もそうですね。

 

日本人はゼロからイチを生み出すのは苦手だが

イチを進化させ広げていく

イノベーション力は優秀だと言われています。

マリトッツォが今後どのような発展を遂げるのか

それとも消えてしまうのか分かりませんが

食の世界でも昔からそうなんだなと感心しています。